「ニッポン社会」入門〜英国人記者の抱腹レポート

僕がとても好きなジャンルのエッセイに、外国人の目から見る日本をつづったものがあります。アーサー・ビナードさんやトニー・ラズロさんの描く日本の姿は、すごく親しみのある風景のはずなのに、どこか遠くの国のような、なぜか切ないような、そんな温かい感覚を呼び起こしてくれます。

この本の著者であるコリン・ジョイスさんが描く日本も同じ。公共のプールも、隅田川の川べりも、町中の銭湯も、よく知っている場所なのに、コリンさんのフィルターを通してみると、まるで小説の中に出てくる架空の都市の景色のよう。

外国人の目を通したおかげで日本や東京の特異性が際立つから面白いのか、はたまた異文化に戸惑う彼らの狼狽を覗き見て楽しんでいるのかは分かりませんが、彼らのフィルターを通すことで、読み手であり、日本生まれの日本育ちである自分が、日本をさらに好きになっていることは確か。

 

たとえば公共プールの5分間の休憩時間を律儀に守る日本人。自分がプールにいれば、「なんだ、この規則」と思うけれど、コリンさんに紹介されれば、「でしょ、日本人は素晴らしいでしょ」と思っちゃう。

う〜ん、バカがつくほど僕が単純なだけなのかな。

 

他にも日本語の魅力やイギリス人が見つけた日本のジェントルマンのお話など、本当に楽しい話が満載。なので、決して電車の中で読んではいけません。ニヤけたり、声を上げて笑ってしまうから。

 

そしてフットボールの本場から来たコリンさんが、僕の大好きなJリーグの文化をほめてくれているので、ちょっと長いけど引用。

 

[補注:Jリーグの応援文化は]イングランドの応援文化からその最良の部分である情熱とチームへの忠誠心を受け継ぎ、度を越した怒りや暴力へとつながりかねない要素を取り除いたスタイルのように思われる。

[中略]

また、どんなにひどいチームでも、ファンがそのチームをしっかり支えているのが素晴らしい(ぼくがそれを実行するのはかなり難しいと思う)。そして何よりも、これほどまでに多くの日本人がわずか数年のうちにサッカー通になったことが素晴らしい。毎週くり広げられるこの壮大なドラマを、その魅力的な細部までひとつ残らず楽しむ術を日本人は身につけたのだ。

「『ニッポン社会』入門」p92

 

読み終えて、コリンさんの次のエッセイが楽しみだなと思っていたら、今はニューヨークに暮らしているそうで…。残念。

でもこちらもぜひ読んでみたいと思います。