2010年

7月

13日

電子書籍は若い芽を摘む?

電子書籍が出版を変えるなんて話がありますね。

 

これまで

[A:著者→出版社→取次→書店→読者]

だった流れが、

[B:著者→(発行スタンド)→読者]

になるみたいな。

 

うん、きっとそうなるんだろうと思うんです。

けど、業界の隅の隅で、文章を書く仕事をしている者として

ちょっと気になることもチラホラ...です。

 

情報の根拠が大事

僕は文章を書いてお金をいただく仕事をしています。

その際に一番気にしなきゃいけないし、気にするところは

「情報の出所」というか「情報の根拠」なんですね。

 

僕ら、無名の書き手に求められる役割は、

あちらとこちらの情報の橋渡し。

作家先生でもあるまいし、僕の思い込みや主張になんて、

誰もお金は払ってくれません。

 

だから、僕らは下調べをするし、取材をするし、

資料の提供を受けることもあるわけです。

(いや、有名な方も同じだと思いますが…)

 

で、「気になること」というのは、今後、

[B]のように著者と読者の間がなくなったら、

「情報の根拠」はどうやって確保するのかしらん? ということなんです。

 

 

チラシの裏

ブログでも同じようなことがよく話題になりますけど、

ブログなら、他人に迷惑をかけたりデマを流布しないかぎり、

良いと思うんですよ。

 

お金を取っているわけではないし、

内容がいわゆる「チラシの裏」でも問題ないし

(このブログもそうですね!)。

 

でも、電子書籍としてお金をいただくとなった場合には、

出所定かでない思い込みや、それに基づいた主張を

ばらまくわけにはいかないでしょう。

 

信用や実績があるということ

これまでの紙の書籍だと、

取材は著者や出版社の名前が大きな威力を発揮してきました。

 

たとえば僕が

「ライターの安藤と言いますが、今度『妖精の冒険〜第2章』という

 本を書きたいので、ストイコビッチ監督にインタビューさせてください」

と、名古屋グランパスにお願いしたところで、

門前払いというか無視されるのがオチです。

 

でも、これが講談社とか小学館とか、

あるいは名の通ったライターさんからのオファーなら、

取材を受ける側でも、少なくとも議論の俎上には乗るんだろうと思います。

これは、ずるいとかそういう話ではなくて、

そういう有名な皆さんには、ちゃんと信用や実績があるということなんです。

 

で、電子書籍の場合、これから世に出ようと思っても、

大半の著者には、この信用や実績がありません。

 

だから取材したくたっても、大きなテーマ、有名な相手だと、

全然、まったく、笑っちゃうほど、話を聞くことはできません。

Jリーグとかプロ野球とか大企業とか、間違いなく門前払いです。

 

信用の肩代わり機関がなくなっちゃう?

でも、まだ出版社が生き残れば、紙で新しい著者が育ち、

電子書籍に流れてくるという図式もあるだろうから良いんです。

 

ただ、[B]のような直接式電子書籍流通が広く普及した場合、

中間で信用力を発揮していた出版社がバタバタと無くなる可能性もあるわけで、

そうすると、今度、新人を発掘する機関がなくなっちゃうわけです。

 

これまで、名もない新人に光をあて、

出版社が信用を肩代わりすることで機会をつくり、

多くの作家がそれを活かし、自分で実績を積み上げてきました。

 

そういう流れがなくなっちゃう…かもしれないわけです。

 

さらにスポーツものの場合だと、ブログやtwitterで、

選手自身の発信力はどんどん高まってます。

 

とすると、もはや、選手に取材できるライターは

「元々の知り合い」ぐらいになっちゃうんじゃないかなと。

 

新しい書き手が育つ社会に

いつの時代もバイタリティにあふれていて、

自分自身で取材経路を開拓していく人はいるものですから、

ライターがまったく屑ばかりになることもないでしょうけど、

こと、ノンフィクションの世界では

電子書籍が書き手の幅を広げる可能性は低く、

むしろ新しい芽を摘むのではないかと僕は予想します。

 

なんとか、中間の信用を取り持つ機関が生まれて、

新しい書き手が育つ社会であってほしいなと思ってます。

できれば、僕もそのおこぼれに預かりたいなと思うのですが、

これから、どうなっていくんでしょうね。

 

面の皮が厚くって、「知り合い風」を吹かせられる奴だけが得をする。

そんな社会になるのだけは、勘弁してもらいたいものです。