石川県立門前高校の女子ソフトボール部を3年間にわたってていねいに取材したドキュメンタリー「私たちの時代」をみました。大地震に見舞われ、悲嘆に暮れながら、明日を目指すソフトボール部の女の子たちを追った作品。
高齢化過疎化が進む町にあって希望の灯となる女子ソフトボール部。
2007年3月25日に門前町をおそった能登半島地震。
絶望の中に希望を求める人々。
定年を間近に控えた名監督と選手を激励するコーチ。
数年後の廃校決定。
実力伯仲の好敵手、津幡高校。
1年生にポジションを奪われる3年生。
熾烈を極める高校総体決勝戦。
これらに部員個々の家庭のエピソードが加わって、「人生ってそんなにいろんなことが起こるの」というぐらいのお腹いっぱいドキュメンタリーでした。
個人的に非常に興味をもったのは、元気のない町でのソフトボール部の存在感でした。
過疎が進むお年寄りばかりの町。失礼ながら、娯楽もなければ、活気もない。そこに襲った大災害。地域の人々は、どれだけ彼女たちの活躍に希望の灯を見たのかなと。
スポーツは感情が積み重なる装置なんですね。希望も願望も夢も絶望も達成感も、非常に分かりやすい形で人々を巻き込んでいくのがスポーツなんです。選手たちが懸命であればあるほど、応援する人たちもその熱にあおられていく文化装置がスポーツなんです。だから、門前町の人たちは彼女たちの活躍に巻き込まれていったんだろうし、彼女たちの奮闘は人々を励ますことができたんじゃないかなと思うわけです。
そこにスポーツチームがあるからといって、若年人口が増えるわけでも、壊れた家が直るわけでもありません。まして彼女たちの活動は高校の部活動。成果を残したところで、町にお金が落ちるわけじゃありません。でも、そこに門前高校の女子ソフトボール部があり、懸命にボールを追う彼女たちのおかげで勇気づけられた人がたくさんいるんですよね。
部員や監督、コーチのみならず、門前町の人々や家族、ライバル校の部員たちにまで、丁寧に取材を行った本当に濃密なドキュメンタリー番組でした。終盤に部員の子たちが次々に吐露する道徳的価値観は、ちょっと体育教育の悪しき部分を見せられた気もしますが、地域におけるスポーツチームという側面から非常に興味深い番組でした。
取材し番組を制作されたスタッフの皆さん、ありがとうございました。
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