2020年の夏季オリンピックとパラリンピックが東京にやってくることになりまして、スポーツ好きの都民としては素直にうれしいわけです。
物心ついたときからスポーツと名のつくものが好きで、オリンピックが好きで、ずっとずっとスポーツを観て過ごしてきた者として、自分の住んでいる都市がオリンピック開催地に選ばれる瞬間を味わえたのは、これとない幸せだなと思います。
もちろん、開催に向けて積立金があるとはいえ競技施設の整備等に巨額の予算が投じられるのは、都のお金の使い方として正しいのか。新設・改修する施設は、将来に向かって活用のメドが立っているのか。安倍さんが制御できている、安心してくれと大風呂敷を広げてしまった福島の汚染水処理や廃炉への道筋は本当に大丈夫なのか......などなどなどなど。不安な点は山のようにあるわけではあるけれど、それでも東京にオリンピック・パラリンピックがやってくるのはうれしいんです。
そしてこれによって、都民はもちろん日本中の人に【スポーツマンシップ】の心が広がってくれればいいなと思うわけです。
今回、オリンピック開催が決定して本棚から引っぱり出して再読しなくちゃと思ったのが、広瀬一郎さんの「スポーツマンシップを考える」です。前にスゴ本オフが「スポーツ」をテーマに行われた際に持って行きたいなと思っていた(けれど都合でオフそのものに行けなかった)本で、タイトルそのままに「スポーツマンシップとは何か」を考える一冊です。
この本で著者の広瀬さんはスポーツマンシップについて、フェアプレーとの違いをまず説きます。
「フェアプレーとは、あくまでプレー中に守るべき考え方や態度のことです。」
つまりスポーツマンシップとは、単にプレー上でルールを守ることのみならず、それも含め全人格的な資質を現す言葉なんですね。同書にはスポーツマンシップとは
「スポーツマンがとるべき最も基本的な態度を促す精神的な理念」
であると定義されています。
この本を読んで思うのは、スポーツマンとは
・ルールを守る良きプレーヤーであり
・勝利を求めて全力を尽くせる良き努力者であり
・敗れた時に相手を讃えられる良き敗者であり
・勝った時に相手をねぎらえる良き勝者であり
・ゲームを支えるあらゆる人に感謝を捧げられる良き人である
のだろうということ。こうした人こそがスポーツマンシップを有する者であるわけです。
こうした資質が大切なのは、競技に参加する者に限りません。限る必要がありません。スポーツを観る者、スポーツを支える者、そしてスポーツの祭典であるオリンピックを迎え入れる我々都民・日本国民にとっても、スポーツマンシップは非常に重要な資質であるべきなのだろうと思います。
たとえば今回、誘致を争ったマドリーやイスタンブールに対してしっかりと敬意を払えるかどうか。トルコの首相が安倍首相を祝福したなんてニュースが流れていましたが、そこに私たちがスポーツマンシップを感じるからこそ、その姿が美しいなと感じるのだろうと思うのです。
これから先、いろいろな試合で応援してるチームが勝ったり負けたりするでしょうけれど、スポーツの試合ってのは勝った奴がいれば負けた奴がいるのは当然です。勝っては相手を蔑み、負けてはふがいない選手達を罵倒し。そんなことを繰り返してればスポーツマンシップが身につくこともないでしょう。
国の名前やユニフォームで差別し、相手を慮らないまま身勝手な応援を繰り返し、勝ったときだけ我が世の春といわんばかりに、選手の威光にすがってでかい顔して敗者の悪口にひと時の恍惚を得る。世界中からスポーツマンを招きいれる我々はそんな態度であってはいけないなと思うわけです。
もちろん僕もグランパスが負けたときなどは感情的になって審判を野次ったりしてしまうわけですが、それは、やっぱりよろしくはないですよねと。寝て起きるだけで聖人になれりゃ苦労もありませんが、何も聖人たらずとも、「スポーツ」という<ルールに則り、勝利を希求し、全力を尽くす遊び>がどのように成立しているのかを考えれば、じわりじわりと自然にスポーツマンシップは身についていくんじゃないだろうかと期待もするわけです。
多分、大切なのは「スポーツってなんだろうか」「スポーツマンシップってなんだろうか」と考えることなんだろうと思うんですね。考えることで、いろんなことが見えるようになって、そして周辺への敬意を自然と持てるようになるんじゃないだろうかと。
小学校の道徳の授業じゃあるまいし、
「明日からスポーツマンシップを大切にしたいと思います」
って言ったところで仕方ないけれど、今回の招致成功を機に、日本中の人がスポーツマンシップについて考え、そしてその心を持ってくれたらいいな。それこそが、オリンピック・パラリンピック開催の大きな意義になるんじゃないでしょうかね。
なので、2020年に向けて僕らが、あるいは子どもたちと一緒に、スポーツマンシップを考えるために、ぜひこの本は読んでおきたいなとオススメしますっ。
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