2012年

3月

30日

人を束ねるを読んだ

名古屋グランパスのGM(ゼネラルマネージャー)久米一正さんがそのマネジメント手法についてまとめた新書が出るというので、さっそく購入してきました。その内容は、単にJリーグの内輪ネタやスポーツビジネスネタにとどまらず、ビジネス集団を統率するマネジメント論、そしてビジネスパーソンとして身につけるべきプレゼン術と幅広いもの。グランパスファン、サッカーファンのみならず、一般(ってラベリングも変だけど)のビジネスパーソンの方々にもぜひとも読んでいただきたいものでした。

 

目次はこんな感じ

 

人を束ねる 名古屋グランパスの常勝マネジメント

久米 一正 著

 

第1章 グランパス構造改革

第2章 激動の2011年

第3章 日立製作所で学んだこと

第4章 GM初期

第5章 人材を集める

第6章 人を束ねる

第7章 GMは教育者である

第8章 ストイコビッチ監督との蜜月

第9章 日本サッカー界への提言

 

 

本書を通して久米さんはマニュアル化の効用を説きます。どんなときも何があってもスムーズに目的に向かって仕事を進めることができるように、そして誰が見ても公正な評価がなされていると納得できるように、マニュアルが大切であると繰り返し強調しています。

たとえば新人選手獲得における口説き方や新外国人選手の生活フォローについても、事細かにマニュアルをつくり、そしてそれをまめにアップデートしていくとのこと。そうすることで有望な選手や家族に安心してもらえるクラブになれるし、外国人選手も余計な生活不安を抱えることなくプレーできるクラブになるというのです。

 

もちろん選手の査定に関しても細かなマニュアルが定められています。野球と違って選手個々の働きを数値化しづらいサッカーという競技ですが、どのようにして選手を納得させてゴネ得を許さないか。本書の中では出し惜しみすることなくそのマニュアルがばばーんと公開されています。このマニュアルを導入してから、グランパスでは契約交渉が長引く選手がいなくなったとか。どんなものかはぜひ中身を見て確認してみてほしいのですが、ファンとしては「ふむふむ、こんな風にして年俸が決まっているのか!」と、非常に興味深く読むことができました。

 

マニュアルはそれ自体が目的化してしまえばマンネリを招くだけです。それを防ぐにはつねにマニュアルの先にある目的を意識して、必要があればマニュアルの改訂をいとわないことが大切。グランパスにとっての目的は勝つことであり、地域の人々との絆を強くしていくことです。

いかに柔軟にマニュアルを運用していき、そして最大限の効果を発揮していくか。サッカークラブといえでも企業ですから、ときには社内プレゼンも必要になります。この本には久米さんがこれまで多用してきたというプレゼン術も公開されているので、参考になる方も多いのではないでしょうか。

 

グランパスの勝ち点一つ一つはもちろん選手たちの活躍によって積み重ねられているものですが、その陰にこうした久米さんをはじめとするスタッフの皆さんによるプロの仕事があると思うと本当に頭が下がる思いです。

 

そしてそして、やはりサッカークラブのバックステージものとして抜群に面白い。グランパスファンならば、本のあちこちに「あ、あのときのことか!」「おぉ、この選手にそんなところが!」と驚いたり、納得したりするところばかり。

 

久米さん自身、本書の中で「自分が築いてきたGMの仕事のノウハウを隠すつもりはない。いつでも喜んですべてを公開する。」と書いているように、この本を読んで他のクラブの運営が改善しちゃったら困るんじゃないかと思うほど、あけっぴろげにあれやこれや書いてある本書。サッカーに興味のある方はもちろん、サッカーにそんなに興味ないかなという方にも、こんな世界があるんだなという感じでぜひ読んでみていただけたらうれしいなと思います。