2009年

8月

17日

メディアがつくる一人称

衝撃のタイム9.58で世界選手権覇者となったウサイン・ボルト。一方、あのアメリカのナショナル・レコード9.71というビックリタイムを出したにもかかわらず2位に終わってしまったタイソン・ゲイ。
スタート前にTVカメラにちょっかいをだしたり、お得意のポーズ(昔いた漫談家のぶるうたすみたい!)を決めていたボルトに対して、客席に向けて手を挙げただけで、これといったパフォーマンスもなく一切表情を崩さなかったゲイ。テレビを通じて受けた僕の印象は、
天真爛漫で才にあふれた天才ボルト 対 寡黙で実直、努力の秀才ゲイ
という構図でした。もちろんゲイも世界トップの天才なんですが…。

レース結果は冒頭に記した通り、ボルトの圧勝。タイムが出た後に映し出されたゲイの「どうすりゃいいんだよ」という表情も印象的でした。しかしHDDレコーダーに録画していた映像はここまで。個人的にボルトよりもゲイがインタビューで何を話すのかが、すごく気になっていたのですが、それをテレビ上で確かめることはできませんでした。

昼を過ぎると、各メディアに選手たちのコメントが出てきました。
「レースに負けて失望しているが、9秒71の自己ベストを出せた。不満はない。ボルトが良いレースをした。自分もベストを尽くしたが、十分でなかった。200メートルを楽しみにしている。(共同)」fromスポナビ
もしかしたら、「自己のベストの向こうにさらに人間がいる」現実を見せつけられて、内心は悔しさで一杯かも知れませんが、コメントだけを見れば、最強の敗者タイソン・ゲイもさばさばした様子です。
なるほど〜と思いながら、気になったのは"asahi.com"に掲載されたタイソン・ゲイのコメント。

(引用)
ゲイは「人間がこんなに速く走れることが分かった。残念ながらオレじゃなかったが」とさばさば。

「さばさば」の印象は僕とまったく一緒なのですが、ひっかかるのは「オレ」という一人称。僕が勝手に寡黙で実直なイメージを持ったから違和感があるのかも知れませんが、一般的に考えても、メディアのインタビューに対して「オレ」と語るアスリートはあまりいませんよね。
どうして朝日新聞の記者さんは、あえて「オレ」と訳したのか?

以前、沢木耕太郎さんは江夏豊の一人称が必ず「ワシ」になる違和感をエッセイで語りました(「奇妙なワシ」バーボンストリート収載)。最近では清原和博がスポーツメディアに対し、「ワシ」という一人称を使うなと苦言を呈しました。
どうもメディアには昔から、一人称を操って選手の印象を作りたいという欲求があるようです。とすると、今回の朝日新聞の記者は、「オレ」でどんな印象を与えたかったのか。
もしもアフリカ系アメリカンの男性はすべて「オレ」にするルールがあるのだとしたら、恐ろしい話です。

と、ここまで書いてネット報道を改めてみてみると、FNN(フジ・ニュースネットワーク)の報道ではボルトの一人称が「おれ」になっているようです。
何をもって「おれ」や「オレ」を選択しているのか。まったく不可解です。

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コメント: 1
  • #1

    Randal (日曜日, 22 7月 2012 02:22)

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